The Vaccine: Inside the Race to Conquer the COVID-19 Pandemic

ワクチン:史上初のmRNAワクチン開発の軌跡

著者:Joe Miller

この本は、新型コロナウイルスワクチンの開発に成功したドイツのバイオテック社(BioNTech)の創業者夫妻、ウグル・シャヒンとオズレム・トゥレジの物語を描いています。

トルコ系移民の子として育った二人は、1990年代にドイツのホンブルク大学病院で出会い、がん治療の研究を通じて意気投合しました。当時は誰も注目していなかったmRNA技術に着目し、がんの個別化治療の開発に情熱を注いでいました。

2020年1月、シャヒンは中国・武漢で発生した新型コロナウイルスに関する論文を読み、無症状感染による急速な感染拡大の可能性を直感。夫妻は急遽、「プロジェクト・ライトスピード」と名付けたワクチン開発プロジェクトを立ち上げます。

バイオテックは当時、がん治療薬の開発に特化した従業員1,300人ほどの中堅企業でした。感染症のワクチン開発の経験はありませんでしたが、長年培ってきたmRNA技術を活用すれば、従来の方法よりも迅速にワクチンを開発できる可能性がありました。

開発チームは20種類の候補ワクチンを並行して開発。動物実験臨床試験を進める中で、最も有望な候補を絞り込んでいきました。資金面での課題もありましたが、米ファイザー社との提携により解決。わずか10ヶ月という異例の速さで、95%という高い有効性を持つワクチンの開発に成功しました。

2020年12月2日、イギリスで世界初のmRNAワクチンとして承認を受け、同月8日には90歳のマギー・キーナンさんが世界で初めての接種を受けました。その後、米国やEUでも承認され、世界中で接種が進みました。

バイオテックの成功は、科学技術のイノベーションの重要性を示すと同時に、多様性を受け入れ、既存の枠にとらわれない柔軟な発想の大切さも教えてくれます。シャヒン夫妻は今も質素な暮らしを続けながら、がん治療薬の開発など、次なる革新的な医療技術の開発に取り組んでいます。

重要ポイント:

  1. mRNA技術
  2. 従来は実用化が難しいとされていた技術
  3. 細胞内で目的のタンパク質を作らせる仕組み
  4. がん治療研究で培った技術をワクチン開発に応用

  5. 開発の特徴

  6. 20種類の候補を並行開発
  7. 従来の10年以上かかる開発期間を10ヶ月に短縮
  8. 95%という高い有効性を実現

  9. 成功要因

  10. 長年の基礎研究の蓄積
  11. 既存の枠にとらわれない柔軟な発想
  12. ファイザーとの戦略的提携
  13. 規制当局との密接な協力関係

  14. 社会的意義

  15. 世界初のmRNAワクチンの実用化
  16. パンデミック対策の新たな可能性を開拓
  17. 科学技術イノベーションの重要性を示す

  18. 経営哲学

  19. 科学的な探究を重視
  20. 長期的な視点での研究開発
  21. 利益よりも医療への貢献を優先